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小さな灯火を地方で灯す

 

メッセージ

地方に人々の希望となる小さな灯火を灯したい。その灯火がやがて万という数に増えれば、国中を明るく照らすことができる。最澄が唐から持ち帰った言葉「一燈照隅 万燈照国(いっとうしょうぐう ばんとうしょうこく)」は、大分県国見町小熊毛港で牡蠣養殖を始めた頃からの、わたしの座右の銘です。

少年時代には、時には朝から9時間も夢中で海で遊ぶ毎日でした。大人になると、地元の漁業は廃れていて、祖父の代から続いた天然漁業を生活の糧とすることはできませんでした。それでも大分には、豊かな海や山の自然の恵みがいっぱいあります。地域が誇れる特産品をつくって、小さな灯火を灯すことで、漁業者に新しい収入をもたらし、町おこしができるのではないか。

こうした想いで、国内や海外の参考例を探していた時に、2017年に磯焼けウニを畜養するウニノミクスに出会いました。海の生き物のゆりかごと言える藻場を食い荒らしてしまい、身が空になったウニを陸上で畜養するという画期的なアイデア。食用昆布の端切れを使った旨味成分たっぷりの独自の餌で育てることで、有名産地の天然ウニに引けを取らない品質のウニが実現できるのです。

広島大学に畜養の給餌に関して研究協力をいただき、ムラサキウニの陸上畜養の商業生産に確信を持つことができました。そこで2019年に、ウニノミクスをパートナーとして株式会社大分うにファームを設立。これまで大分県の漁業者が目を向けなかったムラサキウニが、10週間の陸上畜養により、幻の赤ウニのような美味しいウニに成長するのは、地元漁協役員からも驚きをもって受け止められました。

何でも食べる雑食性のウニは、見た目と違いとても繊細な生き物です。捕獲時の扱いによるダメージが、ウニを生かして育てる畜養の生存率に大きく関わることが分かりました。大分うにファームは、協力してくださる漁業者と丁寧に向き合い、お互いが助け合える協働関係を構築していくことが何より大切だと思っています。

無価値と見なされていた大分県のムラサキウニを価値ある商品に変え、地域の一次産業に持続可能な職業と雇用を生み出す。子供たちや若者が大分の自然に包まれながら暮らせ、復活した藻場に魚が戻ってきて豊かな漁場になっていく未来に向けて。大分うにファームの地方の小さな灯火がきっかけとなって、日本や世界中に持続可能な育てる漁業の灯りが広がっていくことを夢見ています。

 
 
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株式会社大分うにファーム代表 栗林 正秀

漁業者の家に生まれ、幼少時代より国東半島の海で遊ぶ。建設業を営みながら、国見町小熊毛港にて牡蠣養殖を始める。2017年からウニノミクス社と共同で、国東市でウニの畜養試験に取り組む。2019年3月に株式会社大分うにファームを設立。